「就労継続支援B型というサービスがあるのは知っているけど、自分も利用できるのだろうか?」
「年齢や、今まで働いた経験がないことが、利用の妨げになるんじゃないだろうか…」
「社会とのつながりをもう一度持ちたい」という前向きな気持ちと、「でも、本当に大丈夫だろうか」という不安な気持ちの間で、心が揺れ動いているかもしれませんね。
サービス管理責任者として福祉の現場に長年携わる中で、そうした言葉にならない心の声に、たくさん耳を傾けてきました。
その経験から、この記事を読んでくださっている方にお伝えしたいことがあります。
それは、B型事業所の利用条件は、あなたをふるいにかけるための「壁」ではなく、ご自身に合ったサポートを見つけるための「判断材料」だということです。
この記事では、B型事業所を利用するための具体的な条件という事実だけでなく、ご自身が対象になるかどうかを判断し、次の行動を具体的に考えるためのヒントを、丁寧にお話ししていきますね。
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就労継続支援B型の利用条件を理解するために知っておきたい制度の基本
利用条件について詳しく見ていく前に、まずはこの制度がどのような目的で、どのような役割を担っているのか、基本的な部分を一緒に確認していきましょう。
ご自身に合ったサービスを見つけるためには、よく比較される他のサービスとの違いを知ることが、最初の重要な点になります。
- 就労継続支援A型や就労移行支援との違い
- どんな人が就労継続支援B型に向いているのか
就労継続支援A型や就労移行支援との違い
「就労支援」と聞くと、いくつかの種類があって、少し混乱してしまうかもしれませんね。特に「A型」や「就労移行支援」はB型とよく比較されるサービスです。下の表で、それぞれの特徴の違いを比べてみましょう。
| サービス種類 | 目的 | 契約形態 | 報酬 |
|---|---|---|---|
| 就労継続支援B型 | 自分のペースで働く訓練・社会参加 | なし(非雇用型) | 工賃 |
| 就労継続支援A型 | 安定した労働者として働く | あり(雇用型) | 給料(最低賃金保障) |
| 就労移行支援 | 一般企業への就職準備 | なし | なし(訓練のため) |
参考:厚生労働省|就労継続支援
A型とB型のさらに詳しい違いは「就労継続支援A型B型の違いがわからない方向け!給料や仕事内容を比較してどちらが向いているか判断できるポイントを解説」で解説しておりますため、ご覧ください。
どんな人が就労継続支援B型に向いているのか
では、具体的にどんな方が就労継続支援B型の利用に向いているのでしょうか。
現場で見てきた経験からお話しすると、以下のような思いを持つ方々が、B型事業所でご自身らしいスタートを切っています。
- まずは生活リズムを整えるところから、ゆっくり始めたい方
- フルタイムで働くことには、まだ体力的な不安を感じる方
- 同じような境遇の仲間がいる環境で、安心して過ごしたいと感じる方
- プラモデル作りなど、コツコツと集中できる作業が好きな方
- 将来、A型や一般就労を目指すための、大切な準備期間にしたい方
B型は、ただ作業をして工賃を得るためだけの場所ではありません。
安心して過ごせる「居場所」であり、次のステップへ進むための大切な「準備の場」でもあるのです。
利用者の対象やメリットの詳細は「就労継続支援B型はどんな人が利用するの?対象者や利用メリットをわかりやすく解説」で解説しておりますため、ご覧ください。
【一覧】これが就労継続支援B型の利用条件 精神障害や就労経験なしでも対象になるのか解説
ここからが、この記事の最も大切なポイントです。就労継続支援B型を利用するためには、障害や難病があることに加え、これからお話しする4つの条件のうち、いずれか1つに当てはまる必要があります。
一つひとつ、ご自身のこれまでの歩みと照らし合わせながら、一緒に確認していきましょう。
まずは、対象となる4つの条件を一覧表で見てみましょう。
| 対象となる方の例 | 補足 |
|---|---|
| ① 就労経験があり、年齢や体力的に一般企業での就労が難しくなった方 | ブランクがある方や、体調に波がある方も対象です。 |
| ② 50歳以上で、障害や病気が理由で一般企業への就職が難しい方 | ミドル・シニア世代の方が安心して働き続けるための条件です。 |
| ③ 障害基礎年金1級を受給している方 | 年金証書で確認できます。他の条件に関わらず対象となります。 |
| ④ 就労経験はないが、専門家が「B型の利用が適当」と判断した方 | 就労移行支援などを利用した結果、B型での訓練が最善と判断された場合です。経験がなくても心配ありません。 |
就労経験があるが年齢や体力面で一般企業での雇用が困難な方
就労経験があるが年齢や体力面で一般企業での雇用が困難な方は、過去に会社などで働いた経験はあるものの、病気や障害の影響、あるいは年齢や体力の変化によって、以前のように働くことが難しくなった、という方が対象になる条件です。
「また働きたい気持ちはあるけれど、長いブランクがあるから自信がない…」
「体調に波があって、毎日同じ時間に出勤するのは正直、難しい…」
もし、そんなふうに感じているなら、この条件に当てはまる可能性があります。
ご自身の心と体のペースを取り戻しながら、もう一度「働く」ということに慣れていくための場として、B型事業所はとても良い機会になります。
50歳以上の方も就労継続支援B型の利用条件を満たします
年齢も、利用条件を考える上での一つの大切な要素です。具体的には、50歳以上の方で、障害や病気が理由で一般企業への就職が難しい方も、この条件に当てはまります。
年齢を重ねる中で、ご自身の障害とうまく付き合いながら働き続けることの難しさを、より強く感じている方もいらっしゃるかもしれません。
この条件は、そうしたミドル・シニア世代の方が、これからも安心して社会と関わりを持ち、ご自身の経験を活かしながら働き続けられる場を確保するために、設けられているものです。
障害基礎年金1級を受給している方
もし、現在障害年金を受給されているのであれば、その等級も利用条件に関わってきます。
特に「障害基礎年金1級」を受給されている方は、それをもって就労継続支援B型の対象となります。お手元に年金証書があれば、受給している年金の種類と等級を、一度確認してみてください。
この条件に当てはまる方は、他の就労経験の有無などに関わらず、サービスの利用が可能です。
就労経験がなくても利用できるケースとは
「これまで一度も働いたことがないから、自分は対象外かもしれない…」
そんなふうに、ご自身の経歴について、不安に思われている方もいらっしゃるかもしれませんね。
就労経験がない方でも、利用できる可能性があります。
具体的には、就労移行支援事業所などを利用した結果、その方の状況や課題を専門家が客観的に判断し、「B型で経験を積むことが、今のその人にとって一番合っている」と認められた時に当てはまります。
これは、社会に出るための準備として、まずB型事業所でじっくりと経験を積むことが、ご自身にとって最善である、と専門家が判断したということです。
ですから、働いた経験がないことに、引け目を感じる必要は全くありません。
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就労継続支援B型の利用条件に関するよくある質問
利用条件の大枠が分かってくると、「じゃあ、自分のこの状況ではどうなんだろう?」と、さらに細かい疑問が生まれてくるのは、とても自然なことです。
ここでは、日々の相談業務の中で、特に多くの方からお聞きする3つの質問について、一つひとつ丁寧にお答えしていきますね。
- 障害者手帳は必須ですか
- 利用に年齢の上限はありますか
- 利用料金や工賃はどのくらいですか
障害者手帳は必須ですか
結論からお伝えすると、障害者手帳は、必ずしも必須ではありません。
もちろん、手帳(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳)をお持ちであれば、障害があることの証明となり、手続きがスムーズに進みやすいのは事実です。
ですが、手帳がない状態でも、医師の診断書や、定期的に通院していることがわかる書類(自立支援医療受給者証など)があれば、お住まいの自治体の判断で、サービスの対象と認められることがあります。
大切なのは、「福祉サービスのサポートを必要とする状態である」ということを客観的に示せるかどうかです。「手帳がないから」と、最初から諦めてしまう必要は全くありません。
利用に年齢の上限はありますか
利用を始められるのは原則18歳以上とされていますが、利用する年齢に「上限」は、法律で定められていません。
時々、「65歳になると、もう利用できなくなるんですよね?」と不安そうに尋ねられることがありますが、そのようなことはありません。
これは介護保険制度との関係で出てくる話であり、65歳になったからといって、一律に利用が打ち切られるわけではないのです。
必要な手続きをきちんと行えば、65歳を過ぎても、継続して元気に通われている方は全国にたくさんいらっしゃいます。
利用料金や工賃はどのくらいですか
まず、利用料金ですが、ほとんどの方が自己負担なく利用されています。
これは国の制度で決まっており、前年の世帯収入に応じて負担額の上限が設定されていますが、住民税が非課税の世帯の方や、生活保護を受給されている方は、自己負担0円で利用できます。
一方、事業所で作業をすると支払われる「工賃」ですが、これはお給料とは少し性質が異なります。
厚生労働省が発表した最新のデータによると、令和5年度の就労継続支援B型の全国平均工賃は、月額で23,053円です。
正直にお伝えすると、工賃だけで生活を成り立たせるのは、非常に難しいのが現状です。
多くの方は、障害年金などと組み合わせることで、日々のやりくりをされています。
B型で得られる工賃は、生活費の足しという側面だけでなく、ご自身が社会と関わり、活動した証としての、大切な意味を持っているのです。
また、事業所によっては昼食代などが別途必要になることもあります。
例えば、私たちが運営する岡崎市の「岡BASE ピーシーラボ」では、栄養バランスの取れた温かいお弁当を220円で提供しており、食費の負担を軽減する工夫をしています。
工賃の平均額や事業所の選び方については「就労継続支援B型の工賃の平均はいくら?令和最新データで知るお金と事業所の選び方」で解説しておりますため、ご覧ください。
就労継続支援B型の利用条件を満たしていたら行う手続きの具体的な流れ
ご自身が利用条件に当てはまりそうだと分かったら、いよいよ具体的な手続きに進んでいきます。
「手続き」と聞くと、なんだか難しく面倒に感じてしまうかもしれませんが、一つひとつの段階を、専門家が必ずサポートしてくれます。
ここでは、利用開始までの全体の流れを掴んでいきましょう。
- ステップ1 市区町村の障害福祉窓口または相談支援事業所へ相談する
- ステップ2 気になる事業所の見学や体験利用をしてみる
- ステップ3 サービスの利用申請と受給者証の交付
- ステップ4 事業所との契約を結び利用開始へ
ステップ1 市区町村の障害福祉窓口または相談支援事業所へ相談する
まずは、ご自身の「相談したい」という気持ちを伝えることから始まります。
お住まいの市区町村の役所にある「障害福祉課」などの担当窓口に、電話を一本入れてみてください。(窓口の名称は自治体によって少しずつ違います)
「就労継続支援B型の利用を考えているのですが」と伝えれば、担当の方が、これからの流れを丁寧に教えてくれます。
もし、いきなり役所に電話するのは少し緊張する…と感じる方は、「相談支援事業所」という、より身近な相談機関もありますので、そちらに連絡してみるのも良いでしょう。
ステップ2 気になる事業所の見学や体験利用をしてみる
相談と同時に、ぜひ行っていただきたいのが、事業所の見学です。
通えそうな範囲にどんな事業所があるか調べ、いくつか見学に行ってみることを、私たちは強くお勧めしています。
ホームページやパンフレットだけでは分からない、事業所の実際の雰囲気、作業の内容、スタッフや他の利用者さんの表情などを、ご自身の目で見て、肌で感じることが、何よりも大切だからです。
例えば、岡崎市の「岡BASE ピーシーラボ」では、パソコンの知識が全くない方でも、工具を使ってパソコンを解体するといった専門的な作業を体験できます。
このように、実際に作業を体験してみて、「ここなら自分も安心して通えそうだな」と感じられる場所を、焦らずに、じっくりと見つけていきましょう。
ステップ3 サービスの利用申請と受給者証の交付
「この事業所に通いたい」という、心が決まる場所が見つかったら、再び役所の窓口で、サービスの利用申請を行います。
申請をすると、後日、市の担当者との面談(ヒアリング)が行われ、ご自身の状況や、サービスの利用を希望する理由について、改めて確認されます。
そして、サービスの利用が適切だと判断されると、「障害福祉サービス受給者証」という、サービスを利用するための、大切な許可証が発行されるのです。
申請時に必要となるサービス等利用計画の書き方は「障害児支援利用計画の記入例を大人の就労用に超訳!サービス等利用計画セルフプランが初めてでもスラスラ書ける」で解説しておりますため、ご覧ください。
ステップ4 事業所との契約を結び利用開始へ
受給者証が無事に手元に届いたら、いよいよ最後の段階です。
利用を決めた事業所へ受給者証を持っていき、正式な利用契約を結びます。
利用する曜日や時間、工賃のこと、事業所での過ごし方のルールなど、これからに関わる大切なことが書かれています。
分からないことは遠慮なく質問し、全てに納得した上で、契約しましょう。
契約が完了すれば、いよいよ利用開始となります。
就労継続支援B型に関するよく聞かれる質問
最後に、利用を検討する上で多くの方が抱く、素朴な疑問についてQ&A形式でお答えします。
- Q. 就労支援B型は誰でも入れますか?
- Q. 就労支援施設B型はどんな人が利用できますか?
- Q. B型作業所は誰でも利用できますか?
- Q. 就労支援B型では生活できないのですか?
Q. 就労支援B型は誰でも入れますか?
A. 結論から言うと、「誰でも」というわけではありません。
就労継続支援B型は、障害者総合支援法という法律に基づいた、公的な福祉サービスです。
そのため、この記事で解説してきたように、障害や難病があり、かつ国が定めた利用条件のいずれかに当てはまる方が対象となります。
Q. 就労支援施設B型はどんな人が利用できますか?
A. 「身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、または指定の難病がある方」で、なおかつ「一般企業で働くことが難しい具体的な理由(年齢や体力面、就労経験の有無など)がある方」が利用できます。
「自分のペースで、社会とのつながりをもう一度作っていきたい」という思いを持つ、様々な方が利用されています。
Q. B型作業所は誰でも利用できますか?
A. 「B型作業所」という言葉、耳にされたことがあるかもしれませんね。
これは、「就労継続支援B型事業所」の昔ながらの呼び方や、愛称のようなものです。
少し堅苦しい正式名称よりも、親しみを込めてこう呼ばれることがあります。
呼び方が違うだけで、指しているサービスや利用できる方の条件は、これまで説明してきた内容と全く同じですので、ご安心ください。
Q. 就労支援B型では生活できないのですか?
A. 正直にお伝えすると、B型事業所で得られる「工賃」だけで生活を成り立たせるのは、非常に難しいのが現状です。
工賃は、最低賃金が保障されたお給料とは違い、あくまで生産活動に対する対価です。
多くの方は、障害年金やご家族のサポートなどと組み合わせることで、日々の生活を組み立てています。
B型事業所の最も大切な役割は、収入を保障すること以上に、日中の安心できる活動の場を提供し、生活リズムを整え、社会とのつながりを持ち続けることにある、とご理解いただけると幸いです。
変わりたい、でも怖い。その気持ち、 「見学」で確かめてみませんか?
この記事をここまで読んでくださったのは、きっと、心の中に「今の自分から、何かを変えたい」という、切実な願いがあるからだと思います。
でも、その「変化」が一番怖いものだということも、私たちはよく知っています。
だから、どうか一人で悩まないでください。
その不安を、ほんの少しの「好奇心」に変えて、私たちの事業所を覗きに来てみませんか?
岡崎市の「岡BASE ピーシーラボ」は、パソコンの解体や清掃という、少し珍しい仕事を通じて、あなたの「できた!」という小さな成功体験を育む場所です。もちろん、パソコンの知識やスキルは一切いりません。
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(受付時間:平日 10:00〜18:00)
あなたの勇気ある一歩を、私たちは全力でサポートします。
また、就労継続支援B型という制度の全体像や、具体的な仕事内容については「就労継続支援B型とは?仕事内容から工賃、A型との違いも分かりやすく解説」や「就労継続支援B型の仕事内容一覧|自身のペースでできる仕事の見つけ方」で解説しておりますため、ご覧ください。




