就労継続支援B型の工賃能力給完全ガイド|評価制度の仕組みと公平な事業所を見極めるポイント

就労継続支援B型の工賃能力給完全ガイド|評価制度の仕組みと公平な事業所を見極めるポイント 就労継続支援(A型・B型)

「就労継続支援B型の工賃って、どうやって決まるんだろう?」

「能力給って聞いたことあるけど、自分に合っているのかな…」

「評価で工賃が変わるのは、公平なの?それとも不安…」

B型事業所の利用を考え始めたとき、工賃制度について疑問を持つのは自然なことです。

サービス管理責任者として就労継続支援B型事業所の現場で多くの利用者さんと向き合う中で、工賃制度に対する不安や疑問の声を、本当にたくさん聞いてきました。

工賃は、働く実感ややりがいに直結する大切な要素です。

だからこそ、仕組みをしっかり理解した上で、自分に合った事業所を選んでいただきたいと思っています。

この記事では、就労継続支援B型の工賃制度の基本から、近年注目される「能力給」のメリット・デメリット、そして自分に合った事業所を選ぶための具体的なポイントまで、現場の経験を踏まえて丁寧に解説します。

この記事を読み終える頃には、工賃制度への理解が深まり、安心して事業所選びができるようになっているはずです。

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羽柴太一

就労継続支援B型事業所 岡BASE 代表の羽柴です。保育士資格幼稚園教諭一種小学校教諭一種のバックグラウンドを持ち、教育・福祉の観点から利用者様一人ひとりの可能性を広げる支援を統括しています。また、社会教育主事として地域社会との連携を深めつつ、第二種電気工事士の技術を活かした実践的な作業指導や環境づくりも牽引。ソフト・ハード両面から、誰もが安心して活躍できる場所づくりに尽力しています。

羽柴太一をフォローする
  1. 就労継続支援B型の工賃の決め方と基本的な仕組み
    1. 就労継続支援B型の工賃とは何か|給料や賃金との違いを理解する
    2. 就労継続支援B型の工賃の決め方の基本ルール|厚生労働省のガイドラインと計算方法
    3. 就労継続支援B型の工賃の平均額と最高額|全国の相場と地域差
    4. 工賃の支払い形態の種類|時給制・日給制・月給制・出来高制それぞれの特徴
  2. 就労継続支援B型の工賃で注目される能力給とは
    1. 能力給の定義と従来の工賃制度との違い|評価で工賃が変わる仕組み
    2. 就労継続支援B型で能力給が導入される背景|事業所の思いと利用者のモチベーション
    3. 能力給における工賃評価の具体的な方法|評価項目と評価基準
    4. 能力給の計算例とシミュレーション|実際の工賃がどう変わるのか
  3. 就労継続支援B型の能力給に関する法的根拠と厚生労働省の見解
    1. 厚生労働省の通達における工賃差別の禁止規定|技能に応じた差別とは何か
    2. 能力給が認められるケースと認められないケース|グレーゾーンを理解して適切に判断する
    3. 各自治体による能力給の解釈の違い|地域によって異なる見解
  4. 就労継続支援B型の能力給のメリットとデメリット
    1. 能力給のメリット3つ
    2. 能力給のデメリットと注意点3つ
    3. 能力給に関する利用者と保護者の不安への回答
  5. 就労継続支援B型の能力給が向いている人と向いていない人
    1. 能力給が向いている人の特徴|こんな方には能力給がプラスになる
    2. 能力給が向いていない人の特徴|こんな方は慎重に検討を
    3. 自分や家族に合った工賃制度の見極め方|体験利用と相談で確認する
  6. 就労継続支援B型の工賃と能力給に関する事業所選びのポイント
    1. 事業所見学時に確認すべき工賃関連の質問リスト|これを聞けば安心
    2. 工賃規程と評価基準の透明性をチェックする方法|書面で確認しよう
    3. 能力給の評価が公平かどうかを判断する基準|こんな事業所は信頼できる
    4. 工賃が高い事業所の特徴と見分け方|高工賃には理由がある
  7. 就労継続支援B型の工賃規程の作り方と確認ポイント
    1. 工賃規程に記載すべき必須項目|利用者として確認すべきこと
    2. 工賃規程のひな形と作成のポイント(利用者向け確認項目)|こんな内容があれば安心
    3. 工賃計算ソフトやツールの活用方法|透明性の高い事業所の工夫
  8. 就労継続支援B型の工賃に関するよくある質問
    1. 就労継続支援B型の工賃は所得になりますか|税金や年金への影響
    2. 就労継続支援B型の工賃のルールは何ですか|法律で決まっていること
    3. 就労継続支援B型作業所の工賃の決め方はどうなっていますか|事業所ごとの自由度
    4. 就労継続支援B型の平均工賃は時給いくらですか|令和5年度最新データ
    5. 能力給で工賃が下がることはありますか|評価が低いとどうなる
    6. 障害の程度によって工賃に差がつくのは差別ではないですか|法律との関係
    7. 工賃の評価に納得できない場合の対処法は何ですか|不服申し立ての方法
    8. 能力給のある事業所とない事業所どちらを選ぶべきですか|判断基準
    9. 就労継続支援B型の工賃は最低賃金の対象になりますか|雇用契約との違い
  9. まとめ:就労継続支援B型の工賃能力給を理解して最適な事業所を選ぼう

就労継続支援B型の工賃の決め方と基本的な仕組み

能力給を理解する前に、まずは就労継続支援B型の工賃がどのように決まるのか、基本的な仕組みを押さえておきましょう。

工賃の基礎を知ることで、能力給の位置づけがより明確になります。

事業所によって工賃に差がある理由や、自分が受け取る工賃がどう計算されているのかがわかれば、安心して働けますよね。

  • 就労継続支援B型の工賃とは何か|給料や賃金との違いを理解する
  • 就労継続支援B型の工賃の決め方の基本ルール|厚生労働省のガイドラインと計算方法
  • 就労継続支援B型の工賃の平均額と最高額|全国の相場と地域差
  • 工賃の支払い形態の種類|時給制・日給制・月給制・出来高制それぞれの特徴

就労継続支援B型の工賃とは何か|給料や賃金との違いを理解する

就労継続支援B型の「工賃」は、一般企業で働いた時の「給料」や「賃金」とは、法律上の位置づけが異なります。

参考:厚生労働省|障害者の就労支援

B型事業所では、利用者と事業所との間に雇用契約がありません。

そのため、受け取るお金は「賃金」ではなく「工賃」と呼ばれます。

工賃は、生産活動の収益から経費を差し引いた金額を、利用者に分配するものです。

つまり、事業所が販売した商品やサービスの売上から、材料費や設備費などを引いた残りが工賃の財源になります。

このため、事業所の生産活動が好調であれば工賃は高くなり、不調であれば低くなる可能性があります。

雇用契約がないことのメリットは、自分のペースで働けることです。

体調が悪い日は休んでも問題ありませんし、短時間の利用も可能です。

一方で、最低賃金の適用がないため、工賃は一般的な給料よりもかなり低い水準になります。

この点は、B型事業所を利用する上で理解しておく必要があります。

就労継続支援B型の詳しい概要については「就労継続支援B型とは?仕事内容から工賃、A型との違いも分かりやすく解説」でも詳しく解説しておりますため、ご覧ください。

就労継続支援B型の工賃の決め方の基本ルール|厚生労働省のガイドラインと計算方法

工賃の決め方には、厚生労働省が定める基本的なルールがあります。

参考:厚生労働省|就労継続支援に関する報酬・基準について

まず、工賃の財源は「生産活動の収益のみ」から支払うというルールです。

国や自治体から事業所に支払われる運営費(自立支援給付)から工賃を支払うことは禁止されています。

これは、工賃が「働いた対価」であることを明確にするためです。

次に、事業所は「工賃規程」を作成し、利用者の同意を得る必要があります。

工賃規程には、工賃の計算方法、支払い形態、支払日などが明記されます。

この規程は、利用契約時に必ず説明され、利用者が内容を理解した上で同意する仕組みになっています。

また、事業所は平均工賃を向上させる努力義務があります。

各事業所は「工賃向上計画」を策定し、どのように工賃を上げていくかの目標を立てます。

この計画は都道府県に提出され、平均工賃の実績も毎年報告されます。

工賃の計算方法は事業所によって異なりますが、基本的な流れは次の通りです。

ステップ 内容
1. 工賃財源の算出 月間の生産活動の収益から経費を差し引き、工賃財源を算出
2. 分配方法の決定 時給制なら総作業時間で割り、日給制なら総通所日数で割る
3. 個別の工賃計算 各利用者の通所日数や作業時間、能力給などを考慮して計算

この計算過程を透明にしている事業所は、信頼できる運営をしていると言えます。

就労継続支援B型の工賃の平均額と最高額|全国の相場と地域差

厚生労働省が発表した最新のデータによると、令和5年度の就労継続支援B型の全国平均工賃は、月額23,053円です。

参考:厚生労働省|令和5年度工賃(賃金)の実績について

この金額を見て「思ったより低い」と感じる方も多いかもしれません。

ただし、これはあくまで全国平均であり、事業所によって大きな差があります。

地域 平均工賃 時給換算(目安)
東京都 約28,000円 約350円
全国平均 23,053円 約288円
地方(最低県) 約15,000円 約188円

※時給換算は1日4時間、月20日通所で計算した目安です

この地域差の理由は、都市部の方が企業からの仕事の依頼が多く、単価も高い傾向があるためです。

また、個別の事業所を見ると、さらに大きな差があります。

工賃が月額35,000円を超える事業所もあれば、10,000円程度という事業所もあります。

高工賃の事業所の特徴:

  • 専門的な技術を要する仕事(IT系、デザイン、専門的な製造作業など)
  • 自主製品の販売が好調
  • 母体企業が安定している

私たちが運営する「岡BASE ピーシーラボ」でも、中古パソコンの販売・修理を行うPC堂を運営する株式会社トカクが母体のため、パソコンの解体や清掃、梱包といった専門作業を通じて、安定した工賃をお支払いできる体制を整えています。

ただし、工賃の高さだけで事業所を選ぶのは注意が必要です。

工賃が高い事業所は、求められる作業能力も高く、プレッシャーも大きい可能性があります。

自分の体調や能力に合った事業所を選ぶことが、長く安定して働くためには最も重要です。

工賃の詳しい情報については「就労継続支援B型の工賃の平均はいくら?令和最新データで知るお金と事業所の選び方」でも詳しく解説しておりますため、ご覧ください。

工賃の支払い形態の種類|時給制・日給制・月給制・出来高制それぞれの特徴

工賃の支払い形態には、主に4つのタイプがあります。

それぞれに特徴があり、どの形態が自分に合っているかを考えることも、事業所選びのポイントになります。

支払い形態 メリット デメリット 向いている人
時給制 働いた時間が直接工賃に反映される
わかりやすい
事業所の収益が落ちると時給が下がる可能性 体調に合わせて作業時間を調整したい方
日給制 通所すれば日給が保証される
短時間でも安心
たくさん作業しても工賃が変わらない 体調が不安定で作業時間が変動する方
月給制 収入が安定
生活設計がしやすい
頑張りが工賃に反映されにくい 安定した収入を重視する方
出来高制 頑張りが直接工賃に反映される
スピードが上がれば工賃も増える
作業スピードが上がらないと工賃が低い 作業に慣れている方
モチベーションを重視する方

実際には、これらを組み合わせた「基本給+出来高制」や「時給制+能力給」といった複合型の事業所も多くあります。

どの形態が自分に合っているかは、自分の性格や障害特性、働き方の希望によって異なります。

見学の際には、どの支払い形態を採用しているのかを必ず確認しましょう。

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あなたが「納得して、次の一歩を踏み出すこと」です。
まずは「不安」や「疑問」を、私たちに聞かせてください。

就労継続支援B型の工賃で注目される能力給とは

ここからは、本記事の中心テーマである「能力給」について詳しく解説します。

能力給は近年、一部の事業所で導入が進んでいる制度ですが、賛否両論があり、慎重に検討すべきテーマでもあります。

「能力給って何?」「自分に合ってるのかな?」という疑問を持っている方も多いでしょう。

ここでしっかり理解して、自分に合った事業所選びの参考にしてください。

  • 能力給の定義と従来の工賃制度との違い|評価で工賃が変わる仕組み
  • 就労継続支援B型で能力給が導入される背景|事業所の思いと利用者のモチベーション
  • 能力給における工賃評価の具体的な方法|評価項目と評価基準
  • 能力給の計算例とシミュレーション|実際の工賃がどう変わるのか

能力給の定義と従来の工賃制度との違い|評価で工賃が変わる仕組み

能力給とは、利用者の作業能力や成果を評価し、その評価に応じて工賃に差をつける制度です。

従来の工賃制度では、全員が同じ時給や日給、あるいは純粋な出来高制でしたが、能力給では「評価」という要素が加わります。

具体的には、作業のスピード、正確さ、勤務態度、成長度合いなどを定期的に評価し、その結果によって工賃が変動します。

能力給の仕組み例:

  • 基本時給200円 + 評価に応じて0円〜100円の能力給を上乗せ(2階建て方式)
  • 評価によって時給150円〜300円の範囲で変動(時給変動方式)

能力給の導入により、「頑張った人が報われる」仕組みが生まれます。

同じ作業時間でも、評価が高い人は高い工賃を、評価が低い人は低い工賃を受け取ることになります。

この点が、従来の「全員平等」な工賃制度との大きな違いです。

ただし、B型事業所の利用者は、一般企業の労働者とは状況が異なります。

障害特性により、努力しても作業スピードが上がりにくい方もいます。

体調の波があり、安定した成果を出しにくい方もいます。

だからこそ、能力給の導入には慎重な検討が必要であり、賛否両論があるのです。

就労継続支援B型で能力給が導入される背景|事業所の思いと利用者のモチベーション

なぜ、一部の事業所では能力給を導入しているのでしょうか。

事業所側の主な目的:

  • 利用者のモチベーション向上
  • 一般就労を目指す方への評価経験の提供
  • 事業所全体の生産性向上

「頑張っても頑張らなくても工賃が同じ」という状況では、一生懸命取り組む意欲が湧きにくいという声があります。

能力給を導入することで、「頑張れば工賃が上がる」という明確な目標ができ、利用者の意欲が高まることが期待されます。

また、将来的に一般就労を目指す方にとっては、評価される経験が貴重な訓練になります。

一般企業では、評価制度があるのが当たり前です。

B型事業所で評価される経験を積むことで、一般就労への移行がスムーズになる可能性があります。

ただし、これらはあくまで「期待」であり、実際にうまく機能するかどうかは、制度設計と運用次第です。

不適切な能力給制度は、利用者にプレッシャーを与え、かえって体調を崩す原因になることもあります。

利用者や保護者の方としては、その事業所がなぜ能力給を導入しているのか、どのような配慮をしているのかを、しっかり確認することが大切です。

能力給における工賃評価の具体的な方法|評価項目と評価基準

能力給を導入している事業所では、どのように評価が行われるのでしょうか。

評価項目は事業所によって異なりますが、一般的には次のような項目が設定されます。

評価項目 評価内容
作業スピード 一定時間内にどれだけの作業を完成させられるか
作業の正確さ ミスや不良品の発生率
作業態度 時間を守る、指示を聞く、他の利用者と協力するなど
出席率 安定して通所できているか
成長度合い 以前と比べてどれだけ成長したか(相対評価)

評価の頻度は、月1回、3ヶ月に1回、半年に1回など、事業所によって異なります。

重要なのは、評価基準が明確で、誰が見ても納得できる客観的なものであることです。

また、評価結果は本人にフィードバックされ、どの点が良かったのか、どこを改善すればよいのかが具体的に伝えられる必要があります。

一方的に「評価が低かった」と告げられるだけでは、利用者は納得できませんし、改善にもつながりません。

適切な能力給制度では、評価面談が丁寧に行われ、利用者と職員が対話しながら、今後の目標を一緒に考えるプロセスがあります。

もし、能力給のある事業所を検討している方は、見学の際に「どのような評価項目があるのか」「評価はどのようにフィードバックされるのか」を必ず確認しましょう。

能力給の計算例とシミュレーション|実際の工賃がどう変わるのか

能力給により、実際の工賃がどう変わるのかを、具体例で見てみましょう。

例1:基本給+能力給の2階建て方式

利用者 基本給 能力給 時給合計 月収(80時間)
Aさん(評価高) 200円 100円 300円 24,000円
Bさん(評価普通) 200円 50円 250円 20,000円
Cさん(評価低) 200円 0円 200円 16,000円

この方式では、評価が最低でも基本給は保証されます。

そのため、極端に工賃が低くなる心配は少なく、比較的安心できる制度設計と言えます。

例2:評価によって時給そのものが変動する方式

利用者 評価 時給 月収(80時間)
Aさん S 350円 28,000円
Bさん A 280円 22,400円
Cさん B 220円 17,600円
Dさん C 150円 12,000円

この方式では、評価によって工賃の幅が大きくなります。

評価が高い人は高い工賃を得られますが、評価が低い人は全国平均よりもかなり低い工賃になってしまいます。

どちらの方式が良いかは、一概には言えません。

2階建て方式は安心感がありますが、頑張りが反映される幅が小さいため、モチベーション向上効果は限定的かもしれません。

時給変動方式は、頑張りが大きく反映されますが、評価が低いとかなり厳しい状況になります。

自分の性格や障害特性、リスク許容度を考えて、どちらが合っているかを判断しましょう。

また、体験利用の際に、自分が実際にどのくらいの評価になりそうかを、職員に相談してみるのも良いでしょう。

就労継続支援B型の能力給に関する法的根拠と厚生労働省の見解

能力給は良い面もあれば課題もある制度ですが、そもそも法的に認められているのでしょうか。

ここでは、厚生労働省の見解や各自治体の解釈について解説します。

「法律的には大丈夫なの?」という疑問を持つ方も多いでしょう。

この部分を理解しておくことで、事業所選びの際に適切な判断ができるようになります。

  • 厚生労働省の通達における工賃差別の禁止規定|技能に応じた差別とは何か
  • 能力給が認められるケースと認められないケース|グレーゾーンを理解して適切に判断する
  • 各自治体による能力給の解釈の違い|地域によって異なる見解

厚生労働省の通達における工賃差別の禁止規定|技能に応じた差別とは何か

厚生労働省の通達では、工賃に関する重要な原則が示されています。

参考:厚生労働省|障害者自立支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について

その中で、「利用者の障害特性等に応じ、その適性、能力等に配慮した工賃を支払うこと」とされています。

一方で、「技能に応じた差別を設けてはならない」という規定もあります。

この「技能に応じた差別」という表現が、能力給の是非を巡る議論の焦点になっています。

「差別を設けてはならない」というのは、障害の程度を理由に工賃に差をつけてはいけないという意味です。

例えば、「あなたは障害が重いから時給150円」「あなたは障害が軽いから時給300円」という決め方は、明らかに差別です。

しかし、「作業能力を客観的に評価した結果として工賃に差がつく」ことは、必ずしもこの規定に抵触しないという解釈もあります。

つまり、評価の対象が「障害の程度」ではなく「作業能力」であれば、許容される可能性があるということです。

ただし、実際には「障害の程度」と「作業能力」を完全に切り離すことは難しいです。

障害が重いために作業スピードが遅いのであれば、それは本人の責任ではありません。

だからこそ、能力給は法的にグレーゾーンにあり、慎重な運用が求められているのです。

厚生労働省としては、能力給を明確に禁止してはいませんが、積極的に推奨しているわけでもありません。

各事業所の判断に委ねられている状況です。

そのため、利用者や保護者の方は、その事業所の能力給制度が適切なものかどうかを、自分で判断する必要があります。

能力給が認められるケースと認められないケース|グレーゾーンを理解して適切に判断する

それでは、どのような能力給制度なら適切で、どのような制度は問題があるのでしょうか。

適切と考えられるケース:

  • 評価基準が明確で客観的である
  • 障害特性を考慮した評価項目が設定されている
  • 基本給が全員に保証されている
  • 評価結果が本人にフィードバックされ、対話の機会がある
  • 不服申し立ての仕組みがある
  • 絶対評価だけでなく、本人の成長も評価する相対評価がある

このような配慮がある能力給制度であれば、利用者の成長を支援する適切な仕組みとして機能する可能性があります。

問題があると考えられるケース:

  • 評価基準が不明確で、職員の主観に左右される
  • 障害の程度を直接の理由に工賃を決めている
  • 評価が低いと極端に低い工賃になる
  • 評価結果が一方的に通告されるだけで、対話がない
  • 不服申し立ての仕組みがない

このような制度は、利用者に不当な不利益を与える可能性があり、適切とは言えません。

判断のポイント:

事業所を選ぶ際には、能力給の「有無」だけでなく、「どのような能力給制度なのか」を詳しく確認することが重要です。

見学の際には、工賃規程を見せてもらい、評価基準や評価プロセスについて説明を求めましょう。

曖昧な回答をされたり、「企業秘密」として詳細を教えてもらえなかったりする事業所は、避けた方が無難です。

透明性のある運営をしている事業所は、制度についてオープンに説明してくれるはずです。

各自治体による能力給の解釈の違い|地域によって異なる見解

能力給に対する見解は、都道府県や市町村によっても微妙に異なります。

一部の自治体では、能力給を問題視し、事業所に対して指導を行っているケースもあります。

「技能に応じた差別」に該当するのではないかという理由です。

一方、別の自治体では、客観的で透明性のある評価制度であれば、能力給も認められると解釈しているところもあります。

この違いは、厚生労働省の通達が解釈の余地を残しているため、各自治体が独自に判断しているからです。

利用者や保護者の方としては、自分の住んでいる地域の自治体が、能力給についてどのような見解を持っているかを知っておくと良いでしょう。

市町村の障害福祉担当窓口や、都道府県の指導監査担当部署に問い合わせれば、教えてもらえる可能性があります。

また、能力給を導入している事業所に対して、「この制度は自治体に認められていますか?指導を受けたことはありますか?」と質問するのも有効です。

自治体から指導を受けていない事業所であれば、その地域では許容されている可能性が高いと判断できます。

逆に、過去に指導を受けて制度を見直したという事業所であれば、その経緯と現在の制度について詳しく聞いてみましょう。

適切に対応して改善している事業所なら、信頼できると言えます。

就労継続支援B型の能力給のメリットとデメリット

能力給の仕組みや法的な位置づけを理解したところで、次は利用者にとってのメリットとデメリットを見ていきましょう。

能力給は一長一短があり、人によって向き不向きがあります。

「自分にとって能力給は良いのか悪いのか」を判断するためには、両面をしっかり理解することが大切です。

  • 能力給のメリット3つ
  • 能力給のデメリットと注意点3つ
  • 能力給に関する利用者と保護者の不安への回答

能力給のメリット3つ

能力給には、次のようなメリットがあります。

メリット1:頑張りが工賃に反映される

能力給の最大のメリットは、自分の努力や成長が、目に見える形で工賃に反映されることです。

「今月は先月より作業が早くなった」「ミスが減った」という成長が、工賃アップという形で評価されます。

これは、「自分は成長している」「頑張りが認められている」という実感につながり、大きな自信になります。

全員一律の工賃制度では、どんなに頑張っても工賃は変わりません。

それでは、モチベーションを維持するのが難しいと感じる方もいるでしょう。

能力給があることで、「もっと頑張ろう」という意欲が湧いてくるという声も多く聞きます。

メリット2:将来の一般就労に向けた訓練になる

一般企業では、評価制度があるのが当たり前です。

上司から評価を受け、その結果が昇給や賞与に反映されます。

B型事業所で能力給を経験することで、一般企業での働き方に慣れる訓練になります。

「評価される」ということに慣れておくことは、一般就労を目指す方にとって貴重な経験です。

また、評価面談で「自分の強みと弱み」を客観的に知ることができるのもメリットです。

これは、就職活動の際に自己PRを考えるときにも役立ちます。

メリット3:公平感が生まれる

全員一律の工賃制度では、「あの人は適当にやっているのに、自分と同じ工賃なのは不公平だ」と感じる方もいます。

能力給があることで、頑張っている人とそうでない人の間に適切な差がつき、公平感が生まれます。

これは、真面目に取り組んでいる利用者にとって、大きな安心材料になります。

自分の努力が無駄にならないという感覚は、長く働き続けるために重要です。

能力給のデメリットと注意点3つ

一方で、能力給には次のようなデメリットや注意点もあります。

デメリット1:障害特性により不利になる可能性がある

能力給の最大の課題は、障害特性により、どんなに努力しても評価が上がりにくい方がいることです。

例えば、作業スピードを評価される制度で、身体障害により手の動きが遅い方は、どうしても不利になります。

精神障害で体調の波が大きい方は、安定した成果を出しにくいため、評価が低くなる可能性があります。

これは本人の努力不足ではなく、障害特性によるものです。

それを理由に工賃が低くなるのは、不公平だと感じる方もいるでしょう。

適切な能力給制度では、障害特性を考慮した評価基準が設定されていますが、実際にはそこまで配慮されていない事業所もあります。

デメリット2:プレッシャーやストレスになる

「評価される」ということ自体が、人によっては大きなプレッシャーになります。

「工賃を下げたくない」「他の人より評価が低いと恥ずかしい」という思いから、無理をしてしまう方もいます。

その結果、体調を崩してしまっては本末転倒です。

B型事業所は、自分のペースで無理なく働ける場所であることが大切です。

能力給によってプレッシャーが生まれ、その本来の目的が損なわれてしまうリスクがあります。

また、評価が低かったときに、自己肯定感が下がってしまう方もいます。

「自分はダメだ」「役に立っていない」と感じてしまい、かえって意欲を失ってしまうこともあります。

デメリット3:評価の透明性が保たれないリスクがある

能力給制度が適切に運用されていない事業所では、評価基準が不明確で、職員の主観に左右されることがあります。

「なぜこの評価なのか」が理解できないと、納得できませんし、改善のしようもありません。

また、職員との相性によって評価が変わってしまうような事業所もあります。

気に入られている利用者は高評価、そうでない利用者は低評価というのは、公平な制度とは言えません。

評価制度の透明性が保たれていない事業所では、能力給は不公平感を生む原因になってしまいます。

能力給に関する利用者と保護者の不安への回答

能力給について、利用者や保護者の方からよく聞かれる不安に、ここでお答えします。

「評価が低かったら、工賃はどれくらい下がるの?」

これは、事業所の制度によって異なります。

基本給が保証されている2階建て方式であれば、評価が最低でも基本給は受け取れます。

時給変動方式の事業所では、評価次第でかなり低い工賃になる可能性もあります。

事業所見学の際に、「評価が最低だった人の工賃はいくらくらいですか?」と直接聞いてみることをお勧めします。

「評価は誰がするの?公平なの?」

多くの事業所では、担当の生活支援員や職業指導員が評価します。

公平性を保つため、複数の職員で協議して評価を決める事業所もあります。

評価の公平性については、評価基準が明文化されているか、評価プロセスが透明かどうかで判断できます。

見学の際に、工賃規程や評価基準を見せてもらい、納得できるかを確認しましょう。

「体調が悪くて休んだら、評価は下がるの?」

これも事業所によって異なります。

出席率を評価項目に含めている事業所では、欠席が多いと評価が下がる可能性があります。

ただし、適切な事業所であれば、体調不良など正当な理由での欠席は、評価に大きく影響しないよう配慮されているはずです。

体調の波が大きい方は、見学の際に「体調不良での欠席は評価にどう影響しますか?」と確認しておくと安心です。

「評価に納得できなかったら、どうすればいいの?」

適切な能力給制度では、不服申し立ての仕組みが用意されています。

評価に疑問がある時には、再評価を依頼したり、別の職員に相談したりすることができます。

そのような仕組みがない事業所は、透明性に欠けると言えます。

見学の際に、「評価に納得できない時の対応方法は?」と聞いてみましょう。

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まずは「不安」や「疑問」を、私たちに聞かせてください。

就労継続支援B型の能力給が向いている人と向いていない人

ここまで能力給のメリットとデメリットを見てきました。

それでは、実際に「自分は能力給のある事業所が向いているのか?」を判断するには、どうすればよいでしょうか。

人によって性格も障害特性も異なるため、一概には言えませんが、一般的な傾向をお伝えします。

ここを参考に、自分や家族に合った事業所選びをしていただければと思います。

  • 能力給が向いている人の特徴|こんな方には能力給がプラスになる
  • 能力給が向いていない人の特徴|こんな方は慎重に検討を
  • 自分や家族に合った工賃制度の見極め方|体験利用と相談で確認する

能力給が向いている人の特徴|こんな方には能力給がプラスになる

次のような特徴がある方は、能力給のある事業所が向いている可能性があります。

1. 目標があるとやる気が出るタイプの方

「工賃を月に1,000円アップさせよう」「評価でAランクを取ろう」といった具体的な目標があると、モチベーションが上がる方には、能力給が合っています。

数値目標や評価という形で、自分の頑張りが見える化されることが、やりがいにつながります。

2. 将来的に一般就労を目指している方

一般企業での就労を目標にしている方にとって、評価される経験は貴重な訓練になります。

「評価されること」に慣れ、フィードバックを受けて改善するプロセスを学べます。

B型事業所を一般就労へのステップとして考えている方には、能力給のある事業所が適しているでしょう。

3. 体調が比較的安定している方

体調の波が小さく、安定して通所できる方は、能力給でも不利になりにくいです。

欠席が少なく、コンスタントに作業ができれば、評価も安定します。

身体的にも精神的にも安定している方は、能力給の恩恵を受けやすいと言えます。

4. 競争や比較をプレッシャーに感じない方

能力給のある事業所では、どうしても他の利用者との比較が生まれます。

「あの人は評価が高い」「自分は低い」ということが、気にならない方であれば、能力給でもストレスを感じにくいです。

むしろ、「次は追いつこう」とポジティブに捉えられる方には向いています。

5. 成長実感を大切にしたい方

「昨日の自分より今日の自分が成長している」という実感を得たい方には、能力給が適しています。

定期的な評価によって、自分の成長が数値や言葉で示されることは、大きな喜びになります。

能力給が向いていない人の特徴|こんな方は慎重に検討を

一方で、次のような方は、能力給のある事業所を慎重に検討した方が良いかもしれません。

1. プレッシャーに弱い方

「評価される」ということ自体が大きなストレスになる方は、能力給のない事業所の方が合っている可能性があります。

「評価が下がったらどうしよう」「他の人より劣っていると思われたくない」という不安が強い方は、能力給がかえって負担になります。

2. 体調の波が大きい方

精神障害などで体調の波が大きく、安定した通所が難しい方は、能力給では不利になりやすいです。

欠席や早退が多いと、どうしても評価が下がってしまいます。

これは本人の努力では解決できないことなので、能力給のない事業所の方が安心して働けるでしょう。

3. 自己肯定感が低い方

もともと自己肯定感が低く、「自分はダメだ」と感じやすい方は、低い評価を受けたときに深く傷ついてしまう可能性があります。

能力給がない事業所で、ゆっくりと自信をつけていく方が良いかもしれません。

4. 作業スピードが遅い方

障害特性により、どうしても作業スピードが遅い方は、能力給では評価が上がりにくいです。

特に、作業スピードを重視する評価制度の事業所では、かなり不利になります。

スピードではなく丁寧さを評価してくれる事業所や、能力給のない事業所の方が向いているでしょう。

5. マイペースで働きたい方

「自分のペースでゆっくり働きたい」「評価とか気にせず、楽しく作業したい」という方には、能力給は不要かもしれません。

B型事業所の本来の良さは、自分のペースで無理なく働けることです。

その良さを大切にしたい方は、能力給のない事業所を選ぶのも良い選択です。

自分や家族に合った工賃制度の見極め方|体験利用と相談で確認する

「自分は能力給が向いているのか、いないのか」を判断するのは、簡単ではありません。

最終的には、実際に体験利用をしてみて、自分の感覚で確かめることが一番です。

体験利用で確認すべきポイント:

  • 作業をしているときに、プレッシャーを感じるか
  • 評価されることを意識して、緊張してしまわないか
  • 他の利用者と比較されることが気になるか
  • 職員からのフィードバックを前向きに受け止められるか

体験利用は、多くの事業所で数日から数週間受け入れています。

その間に、実際に働いてみて、自分の心と体がどう反応するかを観察しましょう。

また、相談支援専門員やサービス管理責任者に、率直に相談することも大切です。

「自分は能力給が向いていると思いますか?」と聞いてみましょう。

経験豊富な支援者であれば、あなたの特性を踏まえて、適切なアドバイスをしてくれるはずです。

私たち「岡BASE ピーシーラボ」でも、見学や体験利用を随時受け付けております。工賃制度についても丁寧にご説明し、ご本人に合った働き方を一緒に考えますので、お気軽にご相談ください。

最終的には、「ここなら安心して働けそう」と感じられる事業所を選ぶことが、最も重要です。

工賃制度は重要な要素ですが、それだけで決めるのではなく、事業所の雰囲気、職員の対応、作業内容など、総合的に判断しましょう。

就労継続支援B型の工賃と能力給に関する事業所選びのポイント

ここまで、工賃制度と能力給について詳しく解説してきました。

では、実際に事業所を選ぶとき、どのような点に注意すればよいでしょうか。

見学の際に確認すべきポイントや、良い事業所の見分け方を具体的にお伝えします。

これらを押さえておけば、安心して事業所選びができるはずです。

  • 事業所見学時に確認すべき工賃関連の質問リスト|これを聞けば安心
  • 工賃規程と評価基準の透明性をチェックする方法|書面で確認しよう
  • 能力給の評価が公平かどうかを判断する基準|こんな事業所は信頼できる
  • 工賃が高い事業所の特徴と見分け方|高工賃には理由がある

事業所見学時に確認すべき工賃関連の質問リスト|これを聞けば安心

事業所見学の際には、遠慮せずに工賃について質問しましょう。

透明性のある事業所であれば、どんな質問にも丁寧に答えてくれます。

見学時の質問リスト:

質問項目 確認のポイント
平均工賃はいくらですか? 最新年度のデータを聞く。全国平均と比較してどうか。
工賃の支払い形態は何ですか? 時給制、日給制、出来高制、それとも組み合わせか。
能力給はありますか? ある場合は、評価基準や評価プロセスを詳しく聞く。
最高工賃と最低工賃の差は? 利用者間でどれくらいの差があるのかを把握する。
工賃規程を見せてもらえますか? 書面で確認できるかどうかが、透明性の目安。
体験利用中の工賃は? 体験期間中も工賃が出るのか、金額はいくらか。
工賃の支払日はいつですか? 月末締め翌月払いが一般的。振込か現金か。
工賃向上の取り組みは? 工賃を上げるための具体的な計画があるか。

これらの質問に対して、明確に答えてくれる事業所は、信頼できると判断できます。

逆に、曖昧な回答しか得られなかったり、「それは契約後に説明します」と言われたりする事業所は、注意が必要です。

工賃は利用者にとって重要な要素ですから、契約前にしっかり理解できる説明を受ける権利があります。

工賃規程と評価基準の透明性をチェックする方法|書面で確認しよう

工賃規程は、すべてのB型事業所が作成しているはずの書類です。

見学の際には、この工賃規程を見せてもらうようお願いしましょう。

工賃規程で確認すべき項目:

  • 工賃の計算方法(時給制、日給制など)
  • 工賃の支払日
  • 能力給がある場合は、評価項目と評価基準
  • 評価の頻度と方法
  • 不服申し立ての方法

工賃規程が文書化されており、わかりやすく説明してくれる事業所は、透明性が高いと言えます。

また、能力給がある事業所では、評価基準が具体的に示されているかを確認しましょう。

「作業スピード」「正確さ」などの抽象的な言葉だけでなく、「1時間に何個完成させたか」「不良品率が何%以下か」といった客観的な基準があることが理想です。

評価シートの見本を見せてもらえる事業所もあります。

実際にどのような形で評価されるのかを目で見て確認できると、さらに安心です。

もし、「工賃規程は見せられない」「評価基準は企業秘密」などと言われた場合は、その事業所は避けた方が無難かもしれません。

能力給の評価が公平かどうかを判断する基準|こんな事業所は信頼できる

能力給のある事業所を検討している方は、評価の公平性を特に重視しましょう。

公平な評価制度の特徴:

特徴 理由
評価基準が明文化されている 主観に左右されず、誰が評価しても同じ結果になる
複数の職員が評価に関わる 一人の職員の偏った見方を防げる
評価面談が丁寧に行われる 本人が評価を理解し、納得できる
不服申し立ての仕組みがある 納得できない時に再評価を求められる
成長も評価される(相対評価) 能力が低くても成長していれば評価される
障害特性への配慮がある 公平な評価のために合理的配慮がなされている

これらの特徴を持つ事業所であれば、能力給が利用者の不利益になりにくく、成長を支援する仕組みとして機能していると判断できます。

見学の際には、「評価はどのように行われますか?」「複数の職員で協議しますか?」「評価に納得できない時はどうすればいいですか?」といった質問をしてみましょう。

これらの質問に対して、具体的で納得できる回答が得られれば、その事業所は信頼できると考えられます。

工賃が高い事業所の特徴と見分け方|高工賃には理由がある

「できれば工賃が高い事業所を選びたい」と考えるのは自然なことです。

では、工賃が高い事業所には、どのような特徴があるのでしょうか。

高工賃事業所の共通点:

  • 専門的な仕事をしている: IT系、デザイン、専門的な製造作業など、付加価値の高い仕事
  • 自主製品が人気: パンやお菓子、雑貨など、自主製品の販売が好調
  • 企業からの安定した受注がある: 地元企業や母体企業からの継続的な仕事がある
  • 効率的な運営: 無駄な経費を抑え、工賃財源を最大化している
  • 母体が安定している: 社会福祉法人や株式会社など、経営基盤がしっかりしている

例えば、私たち「岡BASE ピーシーラボ」は、中古パソコンの販売・修理を行うPC堂を運営する株式会社トカクが母体です。パソコンという専門的な商材を扱い、安定した販路があるため、利用者の皆さんに安定した工賃をお支払いできる体制を整えています。

ただし、工賃が高い事業所は、求められる作業能力も高い傾向があります。

作業のスピードや正確さが求められ、プレッシャーも大きい可能性があります。

「工賃が高いから」という理由だけで選ぶと、自分には合わない作業内容だったり、プレッシャーが大きすぎたりして、かえって体調を崩してしまうこともあります。

工賃は重要な要素ですが、自分の体調や能力、希望する働き方とのバランスを考えて、総合的に判断することが大切です。

事業所選びについては「就労継続支援B型事業所の選び方を7つのポイントで解説|見学で確認すべきこと」でも詳しく解説しておりますため、ご覧ください。

就労継続支援B型の工賃規程の作り方と確認ポイント

ここでは、利用者や保護者の立場から、工賃規程をどのように確認すればよいかを解説します。

工賃規程は事業所が作成するものですが、利用者としても内容を理解し、納得した上で契約することが重要です。

「工賃規程って難しそう…」と思うかもしれませんが、チェックポイントを押さえておけば大丈夫です。

  • 工賃規程に記載すべき必須項目|利用者として確認すべきこと
  • 工賃規程のひな形と作成のポイント(利用者向け確認項目)|こんな内容があれば安心
  • 工賃計算ソフトやツールの活用方法|透明性の高い事業所の工夫

工賃規程に記載すべき必須項目|利用者として確認すべきこと

工賃規程には、厚生労働省のガイドラインで定められた必須項目があります。

参考:厚生労働省|障害者の就労支援

工賃規程の必須項目:

項目 確認ポイント
工賃の計算方法 時給制、日給制、出来高制など、どのように計算されるのか
工賃の支払形態 現金払いか振込か、手渡しか
工賃の支払日 毎月何日に支払われるのか
評価項目(能力給の場合) 何をどのように評価するのか
評価基準(能力給の場合) 客観的で明確な基準があるか
評価の頻度(能力給の場合) 月1回、3ヶ月に1回など
控除項目 昼食代など、工賃から差し引かれるものがあるか
規程の改定方法 規程を変更する時の手続き

これらの項目がすべて明記されており、わかりやすく説明されているかを確認しましょう。

特に、能力給がある事業所では、評価項目と評価基準が具体的に示されているかが重要です。

抽象的な表現だけでなく、数値基準があることが理想です。

また、「控除項目」にも注意が必要です。

昼食代や材料費などを工賃から差し引く事業所もあります。

手取りとして実際にいくら受け取れるのかを、事前に確認しておきましょう。

工賃規程のひな形と作成のポイント(利用者向け確認項目)|こんな内容があれば安心

工賃規程を見せてもらったとき、どのような内容があれば「この事業所は信頼できる」と判断できるでしょうか。

信頼できる工賃規程の特徴:

  • 言葉が平易でわかりやすい: 専門用語ばかりでなく、誰でも理解できる表現
  • 具体的な数値が示されている: 「適切に」「公平に」などの曖昧な表現ではなく、具体的な基準
  • 利用者の権利が明記されている: 評価への不服申し立て、規程の説明を受ける権利など
  • 図表が使われている: 計算方法や評価の流れが図でわかりやすく示されている
  • 更新日が記載されている: いつの時点の規程なのかが明確

また、契約時には、工賃規程について職員から丁寧な説明を受ける権利があります。

わからないことがあれば、遠慮せずに質問しましょう。

「この部分がよくわからないのですが、例を出して説明してもらえますか?」と具体的に聞くことが大切です。

適切な事業所であれば、理解できるまで何度でも説明してくれます。

逆に、質問を嫌がったり、「そんな細かいことは気にしなくていい」と言ったりする事業所は、透明性に欠けると言えます。

工賃計算ソフトやツールの活用方法|透明性の高い事業所の工夫

最近では、工賃計算を自動化するソフトやツールを導入している事業所も増えています。

これらのツールを使うことで、計算ミスが減り、透明性が向上します。

工賃計算ツール導入のメリット:

  • 手計算によるミスがなくなる
  • 各利用者の工賃明細がすぐに出力できる
  • 過去の工賃データを簡単に参照できる
  • 評価結果と工賃の連動が明確になる

利用者としては、工賃明細書がきちんと発行されるかを確認しましょう。

明細書には、作業時間、時給、評価点(能力給がある場合)、控除額、支給額などが明記されているはずです。

この明細書があれば、自分の工賃がどのように計算されたのかを理解でき、疑問があれば質問できます。

透明性の高い事業所では、利用者ポータルやアプリを導入し、いつでも自分の工賃情報を確認できるようにしているところもあります。

このような取り組みをしている事業所は、利用者への情報開示を重視している証拠であり、信頼できると判断できます。

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就労継続支援B型の工賃に関するよくある質問

ここまで、工賃制度や能力給について詳しく解説してきました。

最後に、利用者や保護者の方からよくいただく質問に、まとめてお答えします。

同じような疑問を持っている方も多いと思いますので、ぜひ参考にしてください。

  • 就労継続支援B型の工賃は所得になりますか|税金や年金への影響
  • 就労継続支援B型の工賃のルールは何ですか|法律で決まっていること
  • 就労継続支援B型作業所の工賃の決め方はどうなっていますか|事業所ごとの自由度
  • 就労継続支援B型の平均工賃は時給いくらですか|令和5年度最新データ
  • 能力給で工賃が下がることはありますか|評価が低いとどうなる
  • 障害の程度によって工賃に差がつくのは差別ではないですか|法律との関係
  • 工賃の評価に納得できない場合の対処法は何ですか|不服申し立ての方法
  • 能力給のある事業所とない事業所どちらを選ぶべきですか|判断基準
  • 就労継続支援B型の工賃は最低賃金の対象になりますか|雇用契約との違い

就労継続支援B型の工賃は所得になりますか|税金や年金への影響

はい、就労継続支援B型の工賃は「所得」になります。

参考:国税庁|給与所得

税法上は「事業所得」または「雑所得」として扱われます。

ただし、工賃が年間48万円(基礎控除額)以下であれば、所得税はかかりません。

月平均4万円以下であれば、ほとんどの方は非課税です。

一方、障害年金を受給している方は、工賃によって年金額が減ることはありません。

障害基礎年金・障害厚生年金は、所得に関係なく受給できます。

ただし、世帯の所得が一定額を超えると、他の福祉サービスの利用者負担額が変わる可能性はあります。

詳しくは、お住まいの市町村の障害福祉担当窓口にご相談ください。

就労継続支援B型の工賃のルールは何ですか|法律で決まっていること

工賃のルールは、障害者総合支援法と厚生労働省の通達で定められています。

参考:厚生労働省|障害者の就労支援

主なルール:

  • 工賃の財源は生産活動の収益のみから支払うこと
  • 工賃規程を作成し、利用者の同意を得ること
  • 技能に応じた差別を設けないこと
  • 利用者の適性、能力等に配慮すること
  • 平均工賃を向上させる努力をすること

これらのルールを守って運営している事業所を選ぶことが、安心して働くための第一歩です。

就労継続支援B型作業所の工賃の決め方はどうなっていますか|事業所ごとの自由度

工賃の決め方は、法律の範囲内であれば、事業所がかなり自由に設定できます。

時給制、日給制、出来高制、能力給の有無など、事業所によって様々です。

ただし、どのような決め方であっても、工賃規程に明記し、利用者に説明して同意を得る必要があります。

つまり、利用者は工賃の決め方を理解した上で、その事業所を選ぶかどうかを判断できるということです。

もし、工賃の決め方に納得できなければ、別の事業所を選ぶこともできます。

就労継続支援B型の平均工賃は時給いくらですか|令和5年度最新データ

令和5年度の全国平均工賃は、月額23,053円です。

参考:厚生労働省|令和5年度工賃(賃金)の実績について

これを時給換算すると、1日4時間、月20日通所と仮定して、約288円になります。

ただし、事業所によって大きな差があり、時給150円程度のところもあれば、400円を超えるところもあります。

自分が検討している事業所の時給が、全国平均と比べてどうなのかを確認してみましょう。

能力給で工賃が下がることはありますか|評価が低いとどうなる

能力給制度の設計によります。

「基本給+能力給」の2階建て方式であれば、評価が低くても基本給は保証されるため、極端に下がることはありません。

一方、「評価によって時給そのものが変動する」方式では、評価が低いと工賃がかなり下がる可能性があります。

事業所見学の際に、「評価が最低だとどれくらいの工賃になりますか?」と具体的に聞いてみることをお勧めします。

その金額を聞いて、「これでも大丈夫」と思えるなら、その事業所を選んでも安心です。

障害の程度によって工賃に差がつくのは差別ではないですか|法律との関係

「障害の程度」を直接の理由に工賃に差をつけるのは、差別にあたる可能性があります。

厚生労働省の通達でも「技能に応じた差別を設けないこと」とされています。

ただし、「作業能力」を客観的に評価した結果として差がつくことは、必ずしも差別とは言えません。

ポイントは、「障害の程度」と「作業能力」を切り分けているかどうかです。

適切な事業所では、障害特性に配慮した評価基準を設定し、公平性を保っています。

疑問に思ったら、事業所に「障害の程度は評価に影響しますか?」と直接聞いてみましょう。

工賃の評価に納得できない場合の対処法は何ですか|不服申し立ての方法

まずは、担当の職員やサービス管理責任者に相談しましょう。

「この評価について、もう少し詳しく説明してもらえますか?」と尋ねることから始めます。

適切な事業所であれば、評価の根拠を具体的に説明してくれます。

それでも納得できない時には、工賃規程に記載されている「不服申し立ての手続き」に従って、正式に申し立てることができます。

また、相談支援専門員や市町村の障害福祉担当窓口に相談することもできます。

第三者の視点から、その評価が適切かどうかを判断してもらえます。

もし、何度相談しても改善されず、不当な扱いを受けていると感じる時には、都道府県の指導監査担当部署に相談することも検討しましょう。

能力給のある事業所とない事業所どちらを選ぶべきですか|判断基準

これは、あなたの性格、障害特性、目標によって異なります。

能力給のある事業所が向いている方:

  • 目標があるとやる気が出る方
  • 将来的に一般就労を目指している方
  • 体調が安定している方
  • 評価をポジティブに受け止められる方

能力給のない事業所が向いている方:

  • プレッシャーに弱い方
  • 体調の波が大きい方
  • 自己肯定感が低い方
  • マイペースで働きたい方

最終的には、体験利用をして、自分の感覚で確かめることが一番です。

「ここなら安心して働けそう」と感じられる事業所を選びましょう。

就労継続支援B型の工賃は最低賃金の対象になりますか|雇用契約との違い

いいえ、就労継続支援B型の工賃は最低賃金の対象になりません。

B型事業所では、利用者と事業所との間に雇用契約がないためです。

最低賃金法は、雇用契約を結んでいる労働者に適用される法律です。

B型事業所の利用者は「労働者」ではなく「サービス利用者」という位置づけです。

そのため、最低賃金以下の工賃であっても、法律違反にはなりません。

もし最低賃金以上の収入を得たい方は、雇用契約のある就労継続支援A型や、一般就労を目指すことになります。

就労継続支援A型については「就労継続支援A型とB型の違いとは?選び方のポイントを徹底解説」でも詳しく解説しておりますため、ご覧ください。

まとめ:就労継続支援B型の工賃能力給を理解して最適な事業所を選ぼう

ここまで、就労継続支援B型の工賃制度と能力給について、詳しく解説してきました。

最後に、大切なポイントをまとめておきます。

工賃制度の基本:

  • 工賃は生産活動の収益から支払われる
  • 雇用契約がないため、最低賃金の適用はない
  • 令和5年度の全国平均工賃は月額23,053円(時給換算約288円)
  • 支払い形態は時給制、日給制、月給制、出来高制など様々

能力給について:

  • 能力給は、作業能力や成果を評価して工賃に差をつける制度
  • 頑張りが反映される、一般就労への訓練になるなどのメリットがある
  • プレッシャーになる、障害特性により不利になる可能性などのデメリットもある
  • 法的にはグレーゾーンで、適切な運用が求められる

事業所選びのポイント:

  • 工賃規程を見せてもらい、内容を理解する
  • 能力給がある場合は、評価基準の透明性を確認する
  • 見学時に工賃関連の質問をしっかりする
  • 体験利用で、自分に合っているかを確かめる
  • 工賃だけでなく、作業内容、雰囲気、職員の対応など総合的に判断する

工賃は、B型事業所で働く上で重要な要素ですが、それが全てではありません。

自分のペースで無理なく働けること、成長を実感できること、安心して通える雰囲気があることも、同じくらい大切です。

この記事でお伝えした知識を活用して、あなたに合った事業所を見つけてください。

もし、事業所選びで迷ったら、相談支援専門員やサービス管理責任者に相談することをお勧めします。

私たち「岡BASE ピーシーラボ」でも、工賃制度について丁寧にご説明し、ご本人に合った働き方を一緒に考えます。見学や体験利用はいつでも受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。

あなたが安心して働ける場所が見つかることを、心から願っています。

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